― 『Secrets of the Maw』が暴いた“モウの本当の顔”
◆あらすじ(ネタバレあり)
『リトルナイトメア1』のDLC『Secrets of the Maw』では、本編でシックスがモウからの脱出を目指していた裏側で、もうひとりの子ども「ランナウェイ・キッド」が同じ空間で旅をしていた。
彼はシックスとは違い、叫びも暴力も使わず、ひたすらノームたちや周囲の環境に頼りながら進んでいく。水中から手を伸ばすグランマ、ノームたちが棲むボイラー室、そしてレディの住む邸宅……。
そのすべてを乗り越えた末に、彼は“ノームに変えられてしまう”。そしてその姿のまま、本編で空腹のシックスに、パンを差し出したのち、喰われてしまう存在として再登場する――
◆キッドとシックスの違い:喰われた者と喰う者
最も象徴的なのは、“同じように脱出を目指した2人”が、まったく違う運命をたどったことや。
- キッドは、最後まで誰も傷つけず、ノームたちとも心を通わせた
- シックスは、飢えに負け、ついには同族の子どもを喰う存在に変貌した
この対比が意味するものは大きい。モウという世界では、「優しさ」や「純粋さ」は生き残れない。
生き延びるためには、どこかで“他者を踏み台にする”覚悟がいる。シックスはそれを選び、キッドはそれを選ばなかった。ただそれだけの違いやのに、結果は天と地ほど違う。
この構造そのものが、現代社会の縮図のようにも感じられる。
◆ノームたち=名を奪われた子どもたちという確信
DLCではキッドがノームに変えられる描写が明確に描かれる。
そして、その後の世界ではノームは“ただの雑魚キャラ”として扱われ、プレイヤーからすら軽視される存在になる。
これはつまり、「名前を持つ存在」から「ただの記号」へと堕ちた状態。この世界で名前とは、存在意義そのものであり、それを失うことは“社会から消える”ことと同義や。
しかもこの変化は、誰かが明確に悪意をもってやったわけではない。世界そのものが、子どもたちを“ノーム化する機能”として作られている。つまりこれは、「喰われる」ことすらできなかった子どもたちの成れの果て。
喰われなかった=忘れられた。
彼らは、**誰からも認識されず、ただ生き残ってしまった“亡霊”**なんや。
◆ノーム視点の妄想:声を失った子どもの記憶
「あの日、レディの部屋で見た鏡が割れたとき、僕らの姿も割れて消えた。 名前を呼ばれることはもうなく、僕らはただのノームになった。 助けたかった。君を信じてパンを差し出した。けど、君は僕を喰った。 それでも僕は、君が生き残るならそれでいいと思った。」
ノームたちが無言なのは、声を失ったからではなく、語ることを許されない存在になったからや。DLCを通してプレイヤーは、彼らに“名前”を与える視点を取り戻す。
それはつまり、記号になった誰かに、もう一度「人間としての視線」を向けることに他ならない。
◆なぜレディはキッドをノームにしたのか?
レディは、モウの頂点に立つ存在。けど、直接的に子どもを喰う描写はない。
彼女は「喰う側」ではなく、「名前を奪う側」や。
- キッドを捕らえたあと、自ら手を下さずノームに変換した
- 鏡を割り、自己像を拒み、他者の姿を消し去る
→ レディは、「存在そのものを塗りつぶす支配者」やったんや。
キッドはレディに選ばれたわけでもなく、拒絶されたわけでもない。ただ、“姿を失った”。
それこそがこの世界における“最も静かな暴力”や。
◆まとめ:DLCが突きつけたのは「選ばれないこと」の絶望
リトルナイトメアDLCが描いたのは、「選ばれなかった子ども」の物語。
キッドは最後まで希望を捨てなかった。ノームたちと通じ合い、誰も裏切らず、必死で抗った。
でも、その姿は誰にも届かず、やがて存在すらも奪われていった。
そして皮肉にも、本編のシックスにとって彼はただの“ノーム”。
「助けた相手に、喰われる。」
こんな絶望があってええんか?って思うけど、それがこの作品の“リアルな悪夢”や。
だからこそ、プレイヤーはあのノームの背中に、キッドの記憶を重ねてしまう。
喰われたノームは、ただの犠牲者ではない。 彼は、最後の最後まで誰かを信じようとした子どもやったんや。
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『リトルナイトメア』の世界、ほんまに奥が深いよな。
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