【ざつ旅1話】その“1225段”がダメ人間を救う!?──旅に出たら、自分に戻れた話

「全ボツやったわ」から始まる、逃避行

ある日、漫画家・鈴ヶ森ちかのスマホに届いたのは、担当編集からの短いメッセージ。
「ネーム、全ボツでした。」

──この瞬間、すべてが終わったような気分になってもうたちか。
でもそのまま凹んでるだけやなく、「もうええわ、旅しよ。」って動くんがえらい。
この“開き直り”こそ、『ざつ旅』のスタート地点。

ちなみにこの流れ、アニメやのに派手な演出もなく、
ちかのリアルな溜息と共に淡々と進んでいく。
それがまた、なんか“分かる…”ってなるねん。

しかも行き先を自分で決める元気すらないから、SNSでアンケート取って「福島・会津若松」に決定。
他人任せのノリに見えるけど、実はこれも“自分の外に出る”っていう大事な一歩。
もはや「どこでもええ」感がリアルすぎて泣ける。

羽黒山神社、1225段の理由

選ばれた旅先で、ちかが向かったのは羽黒山神社。
そこに待ってたのは、まさかの1225段の石段。
いや癒しに来たはずが、ガチ登山て。

「なんでやねん」って思うけど、ここがめちゃくちゃ良かった。
えっちらおっちらと、誰に急かされることもなく、息を切らしてひたすら上を目指すちか。
この“登る”って行為が、自然と心を整えていくように描かれてて、観てるこっちまで浄化されてくる。

ちか自身も、「何か大事なことを考えてるわけでもない」って言うてる。
せやけど、だからこそその“無心の時間”が効くんやろな。

観てる側にも、「こういう時間、自分にも要るわ…」って思わせてくる、
地味やけどめっちゃ染みるシーンやで。

作画クオリティの暴力

“ざつ旅”っていうタイトルやのに、背景がマジで神レベル。
空の色、石段の影、鳥居の佇まい、全部がしっとり美しい。

「ざつって言うてるけど、全然ざつちゃうやん!」ってツッコみたくなるほど。
美術班、たぶん愛が暴走してる。

しかもこの背景が、ちかの“何者でもない自分”の孤独さと静かにリンクしてて、
台詞少なめやのに、めっちゃ感情が伝わってくる。
このギャップがええんよ。

【ざつ旅1話】その“1225段”がダメ人間を救う!?──旅に出たら、自分に戻れた話(後編)

ただ登るだけの時間が、心をほどく。

1225段の石段を、無心で登るちか。
息を切らし、額に汗をにじませながらも、ただ前へ。
「なんでここ来たんやろ」とか「途中で帰ろかな」とか思っててもおかしくないのに、
彼女は一段ずつ確かに自分の足で登っていく。

この“ただの移動”に見えるシーンが、なんとも言えんくらい沁みる。
何かを頑張ってるわけやない。
ただ歩いて、ただ進んでるだけ。
でもそれだけで、彼女の中の何かが少しずつ整っていくんよな。

都会の雑音も、仕事のプレッシャーも、誰かの評価も全部関係ない。
今あるのは、自分と階段だけ。
その静かな空気感が、観てるこっちにもじんわり伝わってくる。

再びのネーム提出、そして…

旅が終わって帰ってきたちかは、早速ネームを描き上げて再提出。
「今度こそいけるやろ」って気持ちで、ちょっとワクワクしながら送り出す。

──でも結果は、またもや全ボツ。

普通ならここで心が折れる。
「もう描くのやめたろか」って思うやろ。
でも、ちかは違う。「また旅、出よっかな」ってつぶやく。

ここがほんまに泣けるねん。
努力が報われることを期待しすぎず、それでも自分を立て直す手段をちゃんと持ってる。
“旅”がちかにとって、心のリセットボタンになってるのがよく分かる瞬間や。

それは「逃げ」でも「現実逃避」でもない。
自分に戻るために、必要なプロセスなんやって思わせてくれる。

SNSの反響も「刺さりすぎる」の声

放送直後のSNSでは、「あれ、自分の話かと思った」って共感の嵐。
とくに反響が大きかったのが、
・現実逃避としての旅
・“無心”で動くことの癒し
・何も変わらんけど、ちょっと前を向けるって感覚

「観光地の紹介じゃないのに旅してる気分になる」って声も多かった。
確かにこの作品、ガイドブック的な情報はほぼゼロやのに、
「旅ええな…行きたいな…」って思わされるのが不思議やねん。

結局、『ざつ旅』の癒しって何なんやろ?

たぶん、それは“きっちりしすぎてへんこと”なんやと思う。
予定通りに行かへん旅。
目的もなく歩くだけの時間。
何も得んかったように思えて、でもちょっとだけスッキリしてる自分。

「こうしなきゃ」って縛りを、一時的にでも外してくれる時間。
それをこの作品は、“ざつ”って言葉で包んでくれてる気がする。


「うまくいかへんこともあるけど、それでも生きてくんやで」
そんなメッセージが、叫びじゃなくて“つぶやき”として届いてくる、静かで強い1話やったわ。

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