小さな再出発は、キッチンから始まった
「バニラな1日」は、夜ドラらしいしっとり系かと思いきや、ええ意味で裏切られたで。物語の始まりは、主人公・白井葵(蓮佛美沙子)が念願やった洋菓子店を閉めるシーン。夢破れてガックリきたところに、謎めいた料理研究家・佐渡谷真奈美(永作博美)が現れて、「たった一人のためのお菓子教室」を提案してくるんや。
最初は怪しさ満点やったけど(笑)、この教室が物語の軸になってくんやな。毎回訪れるゲストが、それぞれの悩みを抱えながらお菓子を作る。ほんで、完成したスイーツと共に少しだけ心がほどけていく。なんちゅうか、派手さはないけど、じんわり効く漢方薬みたいなドラマやで。
甘いだけやない、人の心の味がする
印象に残ったのが、外資系コンサルの順子(土居志央梨)の回。合理主義で人にも厳しい彼女が、フルーツタルトを作る中で、初めて「誰かのために」って視点を持ち始める。ここの描写がまた丁寧でな、ただのスイーツ作りやなく、人間関係の縮図みたいやった。
それにしても、佐渡谷先生のキャラがええ味出してるんよ。「あなたに必要なのは、レシピやないの。きっかけよ」なんてセリフ、かっこよすぎるやろ…。
永作さんの柔らかい雰囲気と芯の強さが絶妙にマッチしてて、見てて安心感すごい。

ロックミュージシャンも、お菓子に救われる夜がある
次に印象的やったのが、ロックバンドのボーカル・秋山静(木戸大聖)の回。無骨で不器用な青年が「オペラ」っていう手間のかかるチョコレートケーキを作るんやけど、理由が「亡き母が好きやったから」って聞いて、心がギュッとなったわ。
お菓子って甘いもんやけど、その奥には人の思い出や願いがぎゅっと詰まってるんやなぁ…って改めて感じさせられる回やった。見た目じゃ分からん人の心の奥を、お菓子はちゃんと映し出してくれる。そんなん、ずるいくらい沁みるわ。
このドラマが教えてくれたこと
全8回という短さの中に、ようこれだけ詰め込んだなって感心してまう。毎話ちがうゲスト、ちがう悩み、ちがうスイーツ。でも、共通してるのは「誰かを思うことの大切さ」やった。
そして、それを見守る葵と佐渡谷先生の関係も良かったわ。先生はただ教える人やなくて、葵自身の心も少しずつ溶かしていく存在やった。葵が笑うたびに「あぁ、この人もちょっとずつ前に進んどるな」って思えて、ほんま応援したくなる。
主題歌のSUPER BEAVER「涙の正体」も、歌詞がストレートでドラマとピッタリやった。あの歌が流れるたび、こっちまで胸が熱くなったわ。
『バニラな1日』は派手さはないけど、毎日をちょっとだけ丁寧に生きたくなる、そんな優しい時間をくれるドラマやったで。
忙しい日々のなかで、「今日も悪くなかったな」って思える時間の大切さを思い出させてくれる。そんな作品やと思うわ。
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